糖は、ヒトにとっても腸内細菌にとっても貴重なエネルギー源になります。
ヒトのからだにも、腸内細菌にも、糖を燃やしてエネルギーに変える発電システムがあるのです。ただし、ヒトと細菌では、システムの性能がずいぶん違います。
ヒトの場合、でんぷんを消化して手に入れたブドウ糖が細胞内に送られて、エネルギーに変えられています。
細胞に入ったブドウ糖は分解されてどんどんかたちが変わっていきます。
最終的には水と二酸化炭素になり、煙のように消え去ります。
一粒の灰も残さずに燃やし尽くす、高性能焼却炉のようなものです。
一方、腸内細菌は自前の消化酵素を使って水溶性繊維を分解。
ゲットした糖をエネルギー源として利用しています。
腸内細菌の焼却システムは、かなりシンプルなつくりです。
糖の分解は途中までしか進まず、燃えカスのように残った分子が吐き出されていきます。
腸内細菌からバラまかれる燃えカスたち。
でも、これがヒトにとって、大いに役立つのです。
燃えカスの1種である「酪酸」は小腸から吸収され、全身の細胞に取り込まれます。
「消し炭」のような分子ですが、高性能な焼却炉なら、エネルギー源として十分活用できます。
大腸の細胞は、この消し炭を全身には送りません。もっぱら、自分で食べてしまいます。
大腸の内側をカバーしている細胞は、自分が必要とするエネルギーの70~90%を、腸内細菌が作る酪酸によってまかなっています。
彼らには、エネルギー源となる栄養素があまり供給されていません。目の前に腸内細菌の食べカスがたくさん漂っているので、「お前らは、それでも食べとけ」ということなのでしょう。
ですから、腸内細菌が不足していると、まず大腸の細胞が栄養失調になってしまいます。
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