「今日は、じゃこご飯をつくりました。一年生の娘が4杯もおかわりしてくれました」
……と、料理教室の生徒さんから喜びの声がよせられました。
これは、ちりめんじゃこと干ししいたけを使った炊き込みご飯です。干ししいたけの戻し汁でご飯を炊き、戻したしいたけは煮しめて具にします。
小学生のお子さんがむさぼるようにガツガツ食べてくれたとお聞きして、「からだが欲している栄養って、自分で感じることができるんだな」と改めて思いました。このじゃこご飯には、成長期に優先順位の高い栄養素が勢ぞろいしているからです。
イワシの稚魚をゆでたものが「しらす」、それを乾燥させたのが「ちりめんじゃこ」ですね。しらすも十分高カルシウム食品なのですが、ちりめんじゃこにはしらすの2.7倍のカルシウムが含まれています。
また、天日干しされたちりめんじゃこには、ビタミンDも大量に含まれています(しらすの約15倍)。ご存じのように、ビタミンDはカルシウムの吸収を高めてくれる栄養素ですね。
ビタミンDを多く含む食品は限られているのですが、その中で突出した供給源となるのが干ししいたけです。ですから、カルシウム不足の人には、じゃこと干ししいたけは最高のコラボになりますね。
最後に、強い骨はカルシウムだけでは作れません。同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのはタンパク質です。こちらも、ちりめんじゃこには豊富に含まれています。
背の高い、からだの強い子供に育ってほしい。
そのためにはカルシウム。
そのためには、やっぱり牛乳……?
もちろん、牛乳以外のチョイスもあります。その一つがじゃこご飯です。干ししいたけの戻し汁やじゃこからの自然のうま味。噛みしめるたびに滋味が広がります。食育にもとてもよいお料理だと思います。
今回のように、「自分のからだが欲しているものはむさぼるように食べてしまう」のを目にする機会は多いです。その時に、いつも思い出す父の文章がありますので、ご紹介しておきましょう。
ぼくには、相撲が好きすぎて、大相撲の世界に飛び込んだ弟がいます。
時々、友だちのお相撲さんをつれて実家に帰ることがあり、父は彼らに手料理をふるまうのを楽しみにしていました。
「この連中が死ぬくらいうまいといったのが鯛の頭の塩焼きだった。……見ていると相撲取りたちは、若さに似合わずおいしいところを知っていて、まず目玉を食い、そのまわりの身から箸をつけはじめる」
父は、「目玉をまず食べるところがおもしろかった」と書いています。
魚の目玉のまわりのブヨブヨした組織は、コラーゲンやコンドロイチンで満たされています。これは、関節などの結合組織の材料となる栄養素です。
「だから関節の故障をいちばん気にしている相撲取りたちが目玉をまず食べるのは当然なのだ」
ちなみに弟は、相撲取りとしては芽が出ませんでした。でも、ずっと下積みだったおかげでチャンコ番を長く務めることになり、料理の腕が上がりました。そのおかげで今では、東京の片隅でオーナーシェフとして腕をふるっています。
※じゃこご飯は、料理学講座第4回「出し汁の回」でご紹介しています。
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